「市役所の方から来ました」「自治体の委託で給湯器の無料点検に回っています」……。そんな突然の訪問や電話に、戸惑いを感じていませんか?
こうした言葉は、多くの場合、高額な契約を結ばせるための虚偽の説明として用いられています。住宅設備監査のプロとして、国民生活センター等の一次情報を基に、大切な資産を守るための真実を配給します。
現行の制度上、自治体が一般家庭の給湯器点検を民間業者に委託する仕組みは想定されておらず、そのように名乗る訪問や電話は信用できません。公的機関をかたって安心させるのは点検商法の典型的な手口です。まずは冷静に、相手の主張を疑うことから始めてください。
第1章 「自治体委託」という言葉の裏側にある嘘の正体
自治体が点検を行わない法的・行政的根拠
国民生活センターのFAQでは、「給湯器の点検を自治体が事業者に委託することはありません」と明記されています。個人の給湯器は、各家庭が所有し管理すべき「私的財産」であり、自治体が個別に巡回点検を行うことはありません。
訪問販売において、事実と異なる説明(不実告知)をして契約させる行為は、特定商取引法で厳しく禁止されています。「自治体から委託されている」といった虚偽の説明があった場合は、その言葉をメモし、名刺やパンフレットと一緒に保管しておくことが、後の法的救済において重要な証拠となります。
ガス会社による「法定点検」との違い
ガス事業法に基づき数年に一度実施される「法定点検(保安点検)」は、ガス事業者等が自社の責任において実施するものであり、自治体とは別のルートで行われます。正規の点検員が「自治体の名前」をかたって強引に買い替えを迫ることはありません。
第2章 被害統計と高齢者の被害実態(2026年最新分析)
急増する相談件数と属性の分析
国民生活センターの報道発表によると、給湯器の点検商法に関する相談(PIO-NET登録分)は、2023年度(2023年12月末日までの登録分)において、2022年度の約3倍(561件→1,099件)に急増しました。
国民生活センターによる分析では、契約当事者の7割以上が70歳以上の高齢者とされており、高齢者が主なターゲットになっていることがわかります。2024年度以降の全国統計は公表途中ですが、多くの自治体で同様のトラブル増加が報告されており、依然として高水準で推移していると考えられます。
出典:国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください-70歳以上の高齢者を中心にトラブル急増!-」報道発表資料より。2023年度は2023年12月31日までの登録分。
| 年度 | 相談件数 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 2022年度 | 561件 | – |
| 2023年度 | 1,099件 | 2023年12月31日までの登録分 |
巧妙化する心理トリック3選
- 権威の利用: 「市役所」「環境省」「補助金窓口」などの名前をかたり、「公的な点検である」というバイアスを利用します。
- 恐怖の煽り: 「爆発する」「一酸化炭素が漏れる」など、危険性を不当に強調して冷静な判断力を奪います(恐怖訴求)。
- 返報性の原理: 「無料点検」という一見好意的な提案により、その後の高額な勧誘を断りづらくさせます。
第3章 実践!悪質な訪問点検を即座に撃退する「監査アクション」
被害を食い止める現場判断ステップ
- ドアを開ける前に確認: 「自治体の委託であれば、今すぐ役所の代表番号に電話して、あなたの会社が委託されているか確認します」と伝えてください。
- 身分証の徹底チェック: 提示された身分証が「自治体発行」のものか確認してください。多くの場合、民間業者の社員証を提示して誤認を狙います。
- 「即決」の完全拒否: どんなに不安を煽られても、その場でのサインや支払いは厳禁です。「家族や馴染みの業者に相談する」と伝え、引き取ってもらいましょう。
交換費用のベンチマーク(一般的目安)
実際の費用は号数や設置環境等で変動しますが、高額請求を見分けるための一般的な目安を把握しておきましょう。
| 機種タイプ | 一般的な目安(工事費込) | 高額請求の疑いがある例 |
|---|---|---|
| 従来型(給湯専用) | 約15万〜20万円 | 30万円以上 |
| エコジョーズ(高効率) | 約20万〜30万円 | 45万円以上 |
※上記は、給湯器販売・施工事業者の公開情報等を参考にした一般的な目安です。実際の費用は号数・設置場所・メーカー・地域・工事内容によって大きく変動するため、必ず複数社から見積もりを取って確認してください。
万が一契約してしまった場合の「法的武器」
- クーリング・オフ: 特定商取引法に基づき、訪問販売で契約した場合は、原則として法定書面を受け取った日を含めて8日以内であれば、無条件で契約解除が可能です。
- 不実告知による取消し: 事業者から「自治体に委託されている」など事実と異なる説明を受けて契約した場合、特定商取引法や消費者契約法に基づき、一定の要件の下で契約の取消しが認められる可能性があります。
※条文そのものは難解であり、実際の適用可否は個別事情により判断されます。速やかに消費生活センターや警察、避難所等の相談窓口へご相談ください。
よくある質問 (FAQ)
Q: 自治体の職員が給湯器の点検に来ることはありますか?
A: 国民生活センターは「給湯器の点検を自治体が事業者に委託することはありません」としています。自治体職員が何らかの理由で家庭を訪問するケース自体は制度上あり得ますが、「給湯器の点検」を名目とした突然の訪問は極めて不自然です。役所の代表番号に自分で電話をし、訪問の有無を必ず確認してください。
Q: 「環境省の補助金で安くなる」と言われたら?
A: 補助金制度や「省エネ」を口実に安心させようとする勧誘が報告されています。補助金の適用条件は厳密に定められており、訪問した業者がその場で断定できるものではありません。安易に信じず、公的な補助金事務局や自治体・省庁の公式サイトで必ず確認してください。
Q: 相談先がわかりません。
A: 不安を感じた場合や判断に迷う場合は、最寄りの消費生活センターにつながる消費者ホットライン「188(いやや!)」に早めに相談してください。
まとめ
- 自治体が個人の給湯器を民間業者に点検させる仕組みは想定されていない。
- 「自治体委託」を名乗る業者の説明は、虚偽である可能性が高いと判断する。
- その場で契約せず、必ず複数社から相見積もりを取る。
- 困ったときは消費者ホットライン「188」へ即座に相談する。


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